主催者挨拶
第38回日本エイズ学会学術集会・総会を、2024年11月28日(木)から30日(土)まで、東京都新宿区・京王プラザホテルにて開催いたします。新宿は、アジア最大級ともいわれるLGBTQ+タウンである新宿二丁目などキーポピュレーションが集う街があり、また日本のHIV/AIDS対策において重要な役割を担う臨床・基礎・社会の機関や団体が立地しています。そうした新宿で、学術集会を開催できることに期待を寄せています。
世界的にも、日本でも2030年までに公衆衛生上の危機としてのAIDSの終結が叫ばれています。私たちはその実現に向け、「AIDS関連の差別・偏見ゼロ」、「AIDS発症者をゼロ」、「HIV新規感染者をゼロ」という3つのゼロの目標に基づいた対策を進めています。
そして、近年ではU=U、多様な検査機会、HIV PrEPなど、様々な複合予防のツールが日本でも揃いつつあります。
これらのツールを効果的に活用し、必要な人々に適切なコミュニケーションやサービスを提供するためには、コミュニティのニーズを最もよく知るコミュニティ自体が活躍する、UNAIDSが提唱する「コミュニティ主導アプローチ」が必要です。そしてこのアプローチが成功するためには、障壁を取り除き、コミュニティのエンパワメントが不可欠です。
また現在は「感染症の時代」と言われ、Covid-19やMpoxなどさまざまな感染症が広がっています。また、HIV/AIDSに見られる差別や偏見も依然として社会の中に存在しています。そうした状況において、HIV/AIDS対策から生み出された「Living Together」の思想は、感染症による人々の分断を終結させ、他の感染症対策にも適用できる重要なものであると考えます。何よりも、AIDSの流行終結はHIV陽性者が身体的・精神的・社会的に健康で豊かな生活を送ることができる社会の実現に資するものであるべきです。
2020年のCovid-19の世界的な流行以降、日本エイズ学会の会長は学術集会の開催方法について大変苦心されてきました。各分野の学会員が集い、直接の対話を行うことが重要だと考えます。そのため、今回の学会ではできるだけ対面形式を多く取り入れ、シンポジウムや一般演題を通じてキーポピュレーションの人々をはじめ、多くの方々に参加いただきたいと考えています。登壇者をエンパワメントするための仕掛けづくりも準備しております。
さらに、若手を学術集会の会長に選んでいただいたことに応え、本学術集会を日本エイズ学会のコミュニティを若手につなぎ、一層の活性化の契機としたいと思っています。各分野からの若手の学会員の積極的な参加と活躍を期待しています。